「もっと頑張れば解決する」は本当か
「もっと時間を使えば解決できる」
「もっと頑張れば結果が出るはずだ」
「もっと多くのことをこなせばいい」
けれど実際には、どれだけ時間を増やしても
どれだけ頑張っても、なかなか変わらない
——そんな経験をしたことはありませんか。
問題は「量」ではなく「向き」にあるかもしれません。
どれだけ速く走っても、向かう方向が間違っていれば、目的地にはたどり着けません。
それと同じことが、仕事や人生でも起きているのです。
「問い」が変わると、すべてが変わる
「何をやるかより、何を問うかが、成果を決める」
これが「イシュー思考」と呼ばれる考え方の核心です。
「イシュー」とは、日本語にすると「本質的な問い」や「取り組む価値のある課題」という意味です。
難しそうに聞こえるかもしれませんが、伝えていることはシンプルです。
「今、自分が本当に向き合うべき問いは何か」
——これを見極めることが、すべての出発点になるということです。
たとえば、こんな場面を想像してみてください。
売上が落ちているチームが2つあります。
一方のチームは「もっと営業を頑張ろう」とすぐに動き出す。
もう一方のチームは「売上減少の主因は認知不足か、それともリピート率の低下か」と問いを立ててから動く。
どちらのチームが本質的な解決策にたどり着けるでしょうか。
問いの質が、行動の質を決めます。
そして行動の質が、結果の質を決めます。
イシューとは何か
では「イシュー」を
もう少し具体的に整理してみましょう。
イシューとは、「答えを出すことで意思決定や行動が変わる、本質的な問い」のことです。
大切なのは3つの条件がそろっていることです。
① 解くことで大きな成果につながること「この問いに答えたら、自分や周囲に意味のある変化があるか?」
② 今、答えを出す必要があること「いつかの話」ではなく「今取り組む必要があること」か?
③ 解いたときにインパクトがあること答えが出たとき、行動や状況が変わるか?
この3つを満たす問いが、イシューです。
逆に言えば、解いても誰の行動も変わらない問いは、イシューではありません。
「まあ知っておいた方がいいかも」程度の問いは、イシューではなく「雑学」です。
イシューとそうでない問いの違い
次に良い問いと
悪い問いについても見てみましょう。
悪い問い:「どうすればブランド力を高められるか?」
これはイシューではありません。
抽象的すぎて、答えが行動に直結しないからです。
「ブランド力を高める」と言われても、何をすればいいか決まりません。
分解されておらず、検証もできない問いです。
良い問い:「売上減少の主因は認知不足か、リピート率低下か?」
これはイシューです。
答えによって打ち手がまったく変わります。
認知不足なら広告を打つ。リピート率低下なら既存顧客へのアプローチを変える。
答えが出た瞬間に、次の一手が決まります。
イシューかどうかを見極める、最もシンプルな問いはこれです。
「この問いに答えたとき、自分や周囲の行動は変わるか?」
変わるならイシュー。
変わらないなら、それは後回しでいいかもしれません。
「犬の道」という落とし穴
イシュー思考を学ぶとき、特に注意したい落とし穴があります。
それが「犬の道」と呼ばれる状態です。
犬の道とは、問いの質を考えず、手当たり次第に動き回る状態のことです。
忙しく動いているように見えて、エネルギーのほとんどが本質的な成果につながっていない。
こんな感覚に心当たりはありませんか。
朝から晩まで忙しいのに、大事なことが進んでいない。
手帳は予定でぎっしりなのに、達成感がない。
たくさんのタスクをこなしているのに、1年後も状況が変わっていない。
これらはすべて、犬の道に迷い込んでいるサインかもしれません。
犬の道を抜け出す唯一の方法は、すべての行動の前に立ち止まり
「この行動は、今の自分にとって本質的な問いにつながっているか?」と問うことです。
本質は「水面下」にある
もう一つ、知っておきたい考え方があります。
それは「氷山モデル」。
私たちが目にする問題の多くは、氷山の水面上に見えている部分にすぎません。
たとえば「売上が落ちている」という問題。
これは水面上の症状です。
水面下には「既存顧客の利用頻度が下がっている」という構造的な変化が隠れているかもしれない。
さらにその下には「顧客ニーズとサービスの間にズレが生まれている」という根本原因があるかもしれません。
水面上の症状だけに反応して「もっと営業を頑張ろう」と動いても
水面下の本質が変わらなければ、問題は繰り返されます。
目の前の症状に反応するのではなく、水面下にある本質を問うこと。
これがイシュー思考の、最初の一歩です。
イシュー思考は、人生にもつながっている
イシュー思考は、ビジネスだけの話ではありません。
人生においても、まったく同じことが言えます。
毎日忙しく過ごしているのに、なんとなく満たされない。
やることはたくさんあるのに、本当に大切なことが進んでいない。
そう感じるとき、それは人生における「犬の道」に迷い込んでいるサインかもしれません。
人生においてのイシューとは、こんな問いです。
「自分は本当に何を大切にしているのか」
「今の自分が向き合うべき本質的な課題は何か」
「この先、自分はどんな人生を歩みたいのか」
この問いを持てるようになることが、自己理解の深さにつながります。
そして自己理解が深まるほど、何に時間とエネルギーを使うべきかが、自然に見えてきます。
今日から試してほしい、3つのこと
① 今日の「最も重要な問い」を一つ決める
今日一日の中で、最も向き合うべき問いを一つだけ決めてみてください。
「今日、自分が最も答えを出すべきことは何か」
——この問いを朝に持つだけで、一日の質が変わります。
② 「これはイシューか?」と問いかける
今やっていること、これからやろうとしていることに「これに答えたとき、自分や状況は変わるか?」と問いかけてみてください。
変わらないなら、それは後回しでいいかもしれません。
③ 水面下を見る習慣をつける
目の前の問題に反応する前に、「これは症状か、それとも本質か?」と一瞬立ち止まってみる。
その一秒の問いかけが、思考の深さを育てていきます。
問いが変わると、人生が変わる
努力の量を増やすより、問いの質を高める方が、はるかに大きな変化をもたらします。
「何をやるかより、何を問うか」
——この順番を変えるだけで、同じ時間・同じエネルギーで、まったく違う結果が生まれます。
それはビジネスだけでなく、人生においても同じです。
本質的な問いを持つこと。
それが、自分らしい人生を歩むための、最初の一歩になります。